腰痛・股関節痛・膝の痛みと「胆経」――身体の横を走る経絡を意識した施術
前回は、私が施術の中で大切にしている「腎の経絡」についてお話ししました。
今回は、その続きとして「胆の経絡(胆経)」について、私が普段の施術でどのように考えているのかを書いてみたいと思います。
私は整体の施術をするとき、痛みが出ている場所だけを見るのではなく、「身体のどこからどこへつながっているのか」ということを大切にしています。
その中で、特に意識することがあるのが「胆経」です。
胆経は身体の横を走る経絡
東洋医学では、身体には「経絡」と呼ばれる気血の通り道があると考えられています。
胆経は、その中でも身体の側面を通っていることが特徴的な経絡です。
頭の側面から首、肩、脇腹、腰の横、股関節周辺、太ももの外側、膝の外側、ふくらはぎの外側を通り、足の外側へと続いていきます。
このように見ていくと、胆経はまさに「身体の横のライン」を通っている経絡だと考えることができます。
私はこの特徴を、日々の施術の中でとても重要なものとして捉えています。
腰痛を見るときにも胆経を意識する
腰が痛いというと、どうしても腰そのものに原因があると考えがちです。
しかし、実際には腰の中心ではなく、
「腰の横が張っている」
「骨盤の横が硬い」
「お尻の外側が張っている」
「股関節の周辺に違和感がある」
という方もいらっしゃいます。
そういう場合、私は腰だけを見るのではなく、腰の横から骨盤、股関節、太ももの外側までを一つのつながりとして見ていきます。
東洋医学的には胆経の流れとして捉えることができますし、解剖学的に見れば、この周辺には大臀筋、中臀筋、小臀筋、大腿筋膜張筋、腸脛靭帯など、身体の動きに関係するさまざまな組織があります。
そのため、腰の痛みがある方でも、腰だけを施術するのではなく、その周辺の状態を確認することが大切だと私は考えています。
股関節と胆経
胆経を考えるとき、私が特に重要だと感じているのが股関節周辺です。
胆経には「環跳(かんちょう)」という代表的なツボがあります。
この周辺には、大臀筋、中臀筋、小臀筋、梨状筋など、股関節の動きに関係する筋肉があります。
また、股関節の外側には大腿筋膜張筋があり、そこから腸脛靭帯へとつながっていきます。
つまり、
腰の横
↓
骨盤
↓
お尻
↓
股関節
↓
太ももの外側
↓
膝の外側
という身体のつながりを見ることができます。
私は股関節に痛みや違和感がある方の場合、股関節そのものだけを見るのではなく、この周辺全体の状態を見るようにしています。
東洋医学では胆経という経絡の流れとして。
解剖学的には筋肉や筋膜、関節の動きとして。
それぞれ違った見方ではありますが、両方の視点を持って身体を見ることが、施術をするうえで大切だと私は考えています。
大腿筋膜張筋と腸脛靭帯
胆経を意識するときに、私がよく注目するのが大腿筋膜張筋と腸脛靭帯です。
大腿筋膜張筋は股関節の外側にある筋肉で、その筋膜は腸脛靭帯へと続いています。
腸脛靭帯は太ももの外側を通り、膝の外側まで伸びています。
そのため、この部分に強い張りや緊張がある場合には、
「股関節の外側が張る」
「太ももの外側が硬い」
「膝の外側に違和感がある」
といった訴えにつながることがあります。
もちろん、膝の痛みにはさまざまな原因がありますので、すべての膝痛を胆経だけで説明することはできません。
ただ、身体の外側のつながりを見るという意味では、胆経という考え方は施術の際の一つの大切な視点になると私は感じています。
膝の痛みと胆経
胆経は膝の外側を通ります。
そのため、膝の外側に張りや違和感がある方の場合には、膝だけを見るのではなく、太ももの外側から膝、さらにふくらはぎの外側まで確認することがあります。
胆経には「陽陵泉(ようりょうせん)」という代表的なツボもあります。
膝の周辺から下肢の外側を見るときには、こうした胆経の考え方も参考になります。
膝が痛いから膝だけを施術するのではなく、
股関節
↓
太ももの外側
↓
膝
↓
ふくらはぎ
と身体の横のラインを一つのつながりとして見る。
これが、私が胆経を意識して施術する理由の一つです。
「胆が弱る」という東洋医学の考え方
ここからは、東洋医学としての考え方になります。
東洋医学では、胆は現代医学でいう胆嚢という臓器だけを指しているわけではありません。
「肝」と「胆」は表裏関係にあるとされ、身体だけではなく、精神面や全身のバランスとも関係するものとして考えられています。
ですから、東洋医学でいう「胆が弱っている」という表現も、必ずしも現代医学でいう胆嚢そのものに病気があるという意味ではありません。
経絡や身体全体の状態を見るための、東洋医学独自の考え方です。
私はその考え方を参考にしながら、身体の側面に強い張りや硬さがある場合には、胆経という視点から身体全体を見ていきます。
食生活から身体を考える
胆について考えるときには、食生活も切り離せないものだと思っています。
胆嚢は、脂肪の消化を助ける胆汁を蓄え、必要に応じて分泌する役割を持っています。
現代の食生活では、昔に比べて油を使った料理や肉類などを食べる機会も増えています。
私は、身体を整えるためには施術だけではなく、普段の食生活も大切だと考えています。
特定の食べ物を食べれば胆経が悪くなる、という単純な話ではありません。
大切なのは、食事が偏りすぎないこと。
野菜、魚、肉などをバランスよく食べ、脂っこいものばかりに偏らないようにすること。
そして、食べ過ぎないこと。
そうした普段の生活の積み重ねも、身体全体を整えていくためには大切だと思っています。
「腎」と「胆」――股関節を見る二つの視点
前回の記事では「腎の経絡」について書きました。
私が股関節周辺を施術するときには、この「腎」と「胆」の両方を意識することがあります。
腎経は身体の内側を走る経絡として捉えることができます。
一方、胆経は身体の外側を走っています。
ですから私は、
「腎は内側から、胆は外側から」
股関節を見る、というようなイメージを持っています。
例えば股関節の内側や内転筋周辺を見るときには腎経を意識し、股関節の外側からお尻、太ももの外側、膝の外側を見るときには胆経を意識する。
このように経絡の流れを意識すると、痛みが出ている部分だけではなく、身体全体のつながりを考えながら施術することができます。
痛いところだけを見るのではなく、身体のつながりを見る
整体の施術では、痛いところだけを一生懸命押せばいいというものではないと私は考えています。
腰が痛いから腰だけ。
股関節が痛いから股関節だけ。
膝が痛いから膝だけ。
そうではなく、
「なぜここが硬くなっているのだろう?」
「どこからこの緊張がつながっているのだろう?」
と、身体全体を見ることが大切です。
胆経という考え方を使うことで、身体の側面を一つのつながりとして見ることができます。
腰の横から骨盤、股関節、お尻、太ももの外側、膝、ふくらはぎ。
このラインを一つの身体のつながりとして見ることで、痛みのある場所とは違ったところにも目を向けることができます。
私が胆経を意識して施術する理由
私が胆経を意識して施術する理由は、東洋医学の考え方の中に、身体を一部分だけではなく「つながり」として見る視点があるからです。
東洋医学では胆経という経絡として。
解剖学的には筋肉や筋膜、関節の動きとして。
それぞれ違った言葉で身体を見ています。
私はどちらか一方だけに限定するのではなく、東洋医学の考え方を参考にしながら、解剖学的な身体の状態も確認して施術するようにしています。
そして、その方の身体に合わせて施術する。
それが私が大切にしている整体の考え方です。
腰痛、股関節痛、膝の痛みなどでお悩みの方も、痛みのある場所だけではなく、身体全体のつながりを一度見直してみてはいかがでしょうか。
普段の食事や生活習慣も、身体を整える大切な要素です。
施術で身体を見直すことと、毎日の食事や生活を見直すこと。
この両方が大切だと考えています。
身体の横を走る「胆経」。
私はこれからも、この経絡の考え方を施術の一つの大切な視点として、お客様の身体と向き合っていきたいと思っています。
